2015年9月
2015年4月から生活困窮者自立支援法が施行され、区市での自立相談支援事業が始まりました。 東京都生活再生相談窓口では、直接来所された方への多重債務の整理や東京都生活再生融資などによる解決のほか、都内区市の自立相談窓口での相談者の中でも困難な問題を抱える方へのサポートも行っています。 最近の事例をいくつかご紹介します。
その1
●相談者:40歳代男性(30歳代無職の妻、子ども8歳と1歳)
●年収:本人年金470万円
●負債:693万円(消費者金融、銀行、個人、税:215万円)
●相談の経過
離婚前の別居期間中、妻に給与全額を渡していたため本人の生活費として借金が始まり、その後の養育費支払いでさらに借金。その後、再婚同士で結婚したが、障がいのある妻の連れ子への対応や子どもの誕生で妻は無職に。税の延滞により銀行口座を差し押さえられ、収納課からの紹介で来所。
●解決策の提案
家計が大幅な赤字のために自己破産しないと税の納付原資が捻出できない。破産申請で金融債務の支払が止まっている間に税の分納交渉と支払を提案。
⇒金融債務を整理することで税金の分納交渉が可能となった事例です。優先課題が分からなくなり、目の前の支出に四苦八苦してしまっている相談が多くあります。家計を整え、ボーナスの使い道の提案と長期的なシミュレーションを提示して道筋を考えてみることをお勧めしました。
その2
●相談者:60歳代後半男性(要介護5の90歳代の母と60歳代の弟)
●年収:本人年金180万円/母年金228万円、弟無職
●負債:220万円(金融債務112万円、個人他108万円)
●相談の経過
「病気の女性を助けてほしい」というメール詐欺にひっかかり、8ヶ月間に800万円以上をつぎ込んだ。さらにインターネット上の「貸します・あげます」詐欺で15万円取られ、生活費に困ってしまった。高齢者支援課、地域包括支援センターの職員が同席して来所。相談の中でようやくこれまでの被害全てが詐欺であることを納得。
●解決策の提案
次の年金がでるまでの生活費として、生活サポート基金の緊急小口貸付10万円と市の応急小口資金貸付5万円を協調融資した。クレジット3社の債務は任意整理による解決を提案し、弁護士会法律相談センターに同行し、弁護士に受任してもらった。次の年金までの家計管理についても助言。
⇒高齢者の家計管理困難事例が増加しています。地域福祉権利擁護事業や地域包括との連携が必要な事例もたくさんあります。
その3
●相談者:70歳代後半女性(施設入所の90歳代の夫)
●年収:本人年金77万円/夫年金172万円
●負債:82万円
●相談の経過
夫の言葉の暴力により子どもが自殺未遂の後、精神疾患を発症し、現在一人暮らしで生活保護を受けている。夫が福祉施設に入所して相談者も子も精神的にも安定しているが、生活が苦しい。
●解決策の提案
家計診断を行い、家計の見直しと消費者金融の債務を任意整理することを提案し、弁護士費用が捻出できないことからクレジットカウンセリング協会を紹介。
⇒任意整理することにより返済のめどが立ち、現金生活による自立も可能となりました。相談後、就職が決まり、生活も安定してきました。
その4
●相談者:70歳代男性/自営の展示販売業。5年前のがん発病以降仕事ができなくなった。3ヶ月前から足の手術で入院。
●年収:本人年金184万円
●負債:2,530万円(住宅ローンを含む)
●相談の経過
病院から入院費が不足する怖れがあると地域包括支援センターへ連絡が入り、自立相談支援機関が介入。生活サポート基金に応援要請があり対応。金銭管理を行っていた社協も連携。
●解決策の提案
家計を精査したところ、収支が大きく崩れ、自宅マンション売却が必要な状況であることが判明したが、オーバーローンである可能性が高いため破産を提案し、弁護士介入。退院後の入居施設探し、特養の順番待ちを実施(特養に入所できた)。住宅を明け渡すために残った私物を誰かに使ってほしいという相談者の希望を受け、環境NPOに無料で引取りを依頼。
⇒4月から始まった生活困窮者自立支援法による自立窓口と関係者が連携することにより、スピード感を持って相談者の生活再生をすすめることができました。
その5
●相談者:20歳代男性。単身。最初の相談時は「求職者支援制度」利用中、2回目の相談時は会社員(非正規雇用、社保有り)。
●年収:240万円
●負債:808万円(奨学金579万円、金融債務131万円、家賃82万円、税金16万円)
●相談の経過
小学生の頃に両親が離婚し父親の元で育つ。2年前に他界した浪費家の父親が大学の授業料(奨学金)を長らく滞納していたため卒業を控え除籍となった。在学中から生活費に困ると借入れで凌いだことで借金が膨らんだ。家賃も1年以上滞納。その後、国の職業訓練給付金10万円で生活するも返済に窮し相談に来所。
●解決策の提案
負債が多額のため弁護士会法律相談につなぎ、法テラス利用で自己破産を委任。併せて家計診断の結果、給付金10万円だけでは不足するためアルバイトを探すこと、大家さんと相談することを提案。7ヵ月後、会社員となったが、滞納家賃の解消に至らず転居費用等の工面について再相談。東京都生活再生融資の要件に満たず、住宅確保の手段として「TOKYOチャレンジネット」を紹介。
⇒「TOKYOチャレンジネット」の一時住宅(チャレンジハウス)利用の支援が決定し転居。一般の賃貸住宅に転居するための費用を積み立て自立することができた。
その1
●相談者:50歳代男性(子ども2人・成人)
●年収:本人540万円/子ども141万円
●負債:154万円(金融債務56万円、学費98万円)
●相談の経過
介護関連会社を経営不振で退職。現職を探すまでの間、収入が低かったため生活費の不足分を借金。2011年に任意整理。
大学生の長女は既に就職内定を得ているが、4年生分の学費が支払えず、卒業も就職もできない状況に。
●解決策の提案
学費と、任意整理中の債務を一本化しての東京都生活再生融資を斡旋。
⇒ 子どもの学費と任意整理の支払いで家計収支が回らなくなっていた中、融資により月の返済額も小さくなり、家計に余裕ができました。長女は就職後、返済を助けることになっています。
その2
●相談者:40歳代男性 妻:無職
●年収:本人386万円
●負債91万円(家賃、住民税等)
●相談の経過
経営者の父が亡くなり、会社の保障債務(6800万円)を自己破産。その後、妻の病気による医療費を友人・親戚に借りた。しかし、それでも不足の生活費を退職金でまかなう。転職期間の住民税を滞納したため、口座を差し押さえられた。家賃更新が高いためURへの転居を希望。
●解決策の提案
転居費用および延滞した家賃と住民税について、東京都生活再生融資を斡旋。融資の結果、安いURに転居でき、生活の建て直しができた。
⇒融資は新たな債務ともなります。返済が見込め、生活再生のために有効と判断したとき、当法人からの東京都生活再生融資の斡旋が可能となります。
その3
●相談者:40歳代男性(妻と子どもとの4人世帯)
●年収:本人351万円/妻120万円
●負債332万円(税金314万円、金融債務、保育料各9万円)
●相談の経過
収入減少により生活費補填のために借金を繰り返し、税金を滞納。滞納税について給与差し押さえを受けた。
●解決策の提案
金融債務については債務整理が必要と提案。和解成立後、金融債務の残りと保育料、延滞税について東京都生活再生融資を斡旋。
⇒差し押さえの心配なく、現金の生活ができるようになり、安定した生活を取り戻すことができました。
注意) その2とその3は税金も含む融資事例ですが、2015年4月より都融資の制度が変わり、税を中心とした融資は原則できなくなりました。詳細についてはご相談ください。
これまで20年近くの間、月末はずっと返済のことばかり考えていました。毎月の借金返済のために、別なところから借りるということをくり返していました。
弁護士を訪ねようともしましたが、敷居が高くなかなかできませんでした。たまたま、ホームページでこちらの相談室を見つけ訪ねたところ、ていねいかつ親身に相談にのっていただき、安心して債務整理を決意できました。
保有する不動産をどうするか、任意整理か破産かといった方針を私が決めるのに時間がかかりましたが、自己破産でいくと決めてからは比較的スムーズ に進みました。こちらで紹介していただいた弁護士さんからは細かなアドバイスをいただけ、スムーズに裁判所から免責許可を得ることができました。
現在は安らかな気持ちで眠ることができるようになりました。少しですが、お金も残るようになりました。これからは、以前のようにぜいたくに走るのではなく、身の丈に応じて使うようにしようと反省し、生活を改めているところです。
こちらの相談室で相談にのっていただいたことをきっかけに、文字通り人生の再スタートを切ることができました。ありがとうございます